荒い息が室内に響く。

それなりの余裕を持ったベッドは、大の男3人を乗せて微かな悲鳴を上げていた。


「……どうだ?ロイ。気持ちいいか…?」

男の声がハボックの耳にも届く。

「ふざけ、るな…!」

「気持ちいいんだろ?……少尉のはどんな感じだ?俺より太いか、それとも奥まで突いてくれるのか?教えろよ、ロイ」

揺さぶられ続け、思うように声を発せない彼が頭を振って否定するが、ハボックにとってはその仕草も興奮を煽る材料としかならなかった。
ヒューズの恥辱を煽る言葉も、彼の表情も肢体も何もかもがたまらない。

素直に反応した自身の昂りが、彼の中でその容積を増した。
これ以上ないくらいに強くロイの腰を掴んで抽送を繰り返す。

「も、う…やめ、ろ…!」

激しい突き上げに、彼の声も途切れる。
普段なら厭味も流暢に紡ぎ出すその唇が戦慄き、時折漏れる微かな喘ぎが心地良かった。

「っ、つ…!」

動きに合わせて彼の腰を引き寄せた時、互いの汗で手が滑った。ハボックの手が乾いた音を立ててベッドの上に落ちる。
激しかった抽送は漸く止まり、ハボックの頬を伝い落ちた汗が弾みをつけてロイの顔に降りかかった。

「……!」

いきなり降りかかってきたそれが目に入ってしまったのか、ロイが忙しなく瞬きをし目をきつく瞑った。手で顔を拭いたくとも、上半身ごとヒューズに縫い止められていてはどうにも出来ない。
汗を払いたいのか、それともハボックの熱を帯びた息を間近に感じることも不快なのか。ロイが力なく頭を振った。

「ああ、目に入っちまったか」

気付いたヒューズが、ひどく優しい手つきで彼の目元を拭う。
次いで、頬。
口元。

最後には額に貼りついた前髪を掻きあげてやって、その額に口付けを落とす。

柔らかな唇が離れた頃に、漸くロイが瞳を開いた。
快楽と屈辱。それから親友――――いや、恋人に裏切られた失意と怒りがその双眸に浮かんでいる。その目が真直ぐにハボックを貫いた。

「少尉がイくまで、もうちょい付き合ってやれや」

上半身を抱き起こし、白く滑らかな頬にヒューズが自身の頬を擦り付けると、髭の当たる感触が痛いのか不快なのか、彼は更に顔を歪めた。それを確認して、男は満足げに口端を上げると再びハボックに向き直る。
そしてその鋭い目線で続きを促すのだ。

「……っ、あ……!」

ハボックが体内に納めたままだったそれで深く穿つと、小さな悲鳴が彼から上がった。
構わず力の入らない彼の脚を抱え上げて、無理な体勢のまま抽送を繰り返す。掴んだ彼の脚がまた汗で滑りそうだったが、ヒューズがそれを更に開かせるようにして支えてくれたので、ハボックは遂情するためだけの行為へと没頭することが出来た。



ベッドの軋む音と、卑猥な水音。小さな呻きと漏れ出た喘ぎ声が響き、室内は汗と体液、そしてそれぞれの体臭が立ち込めている。



常には凛とした上官の声が、欲と屈辱に濡れて今にも泣き出しそうに震えている。そのことに胸が痛み、けれど相反していつになく昂る自分に戸惑いは隠せなかった。
いくらでも拒絶することが出来た、強姦まがいのセックスに溺れている。

それでも。
後悔と自責の念に囚われながら、それでもこの馬鹿げた行為を止める気にはならない。
相手へ抱く愛情や尊敬は確かにあるが、今の自分を満たしているのは歪んだ征服欲だった。

「く……!」

強い快感が背筋を走り、脳へと突き抜ける。

霞んだ視界の向こうに、目を細めてハボックを見つめる男が見えた。上気したロイの頬にやはり自身の頬を擦りつけて、時折彼に何かを囁いているようだった。

男がハボックをこの行為へ引き摺り込んだ理由は、恐らく1つだけじゃない。
自身でも気付かなかった、ハボックの奥深くに眠る加虐心が彼に向いていたのを誰よりも早く感じ取っていたからなのだろう。

それは同じ闇を抱える者が持つ直感なのかもしれない。
まるで沸騰した頭の中に氷を投げ入れられたかのように、高揚し霞む思考の中で、そのことだけがやけにクリアに感じられていた。